いざり動作

その一つは「いざり」です。いざり動作は、長座位で座った状態から.両手を背中の後方につきかかとか足底にカを入れて轡部を浮かし.足でからだを後方に送り手はからだを支えながら同じようにずり動かし.伸びた足をからだに引き戻しまたずり動くといったように同じ動作を繰り返して移動するというものです。足を引き戻したところで、いざり移動の1サイクルが終了します(図必)。これを繰り返すことにより、室内であればほとんどの場所に移動して目的を達することができます。後方だけでなく、斜め後方や前方へいざることもできます。また、片手、片足が使えるだけといった場合でも、麻痔側の下肢の下に健側下肢を入れて力を入れれば斜め後方へいざれます。図43 いざりによる移動もう一つの移動方法は座位から前に倒れるか、またはからだの向きをうつ伏せの方向に回転させて四つ這いになって進む「四つ這い歩行」(図伺)です。これは四つ這いになって、手、足を交互に動かして前方に移動する方法ですが、この四つ這い歩行は安定した体位が保て、安全に大きな距離を移動できる点で、いざりによる移動よりも効率的です。

リハビリテーションの訓練どおりの移動方法

しかし、四本足で立つ、歩く方法は、動物を連想してしまって格好がよくないと思う人が多く、病院へ受診した際に医師に「自分は自宅で四つ這い歩行をしている」とはなかなかいいづらいようで、介助をする人も口外したがりません。しかし膝頭を見ますと四つ這い歩行をしている人にはタコができていたり、皮膚に粉がふいていたりします。そこで、詳しく聞き出しますと「常に四つ這いで移動している」と告白されることが多いのですが、それは四つ這い移動が恥ずかしいこととの思い込みと、もう一つはリハビリテーションの訓練どおりの移動方法をとっていないことを医師に叱られるのではないかと危倶しているためと思われます。多くの高齢者は機能回復訓練で、歩行器を使つてのこ足歩行を教わるのですが、家庭内での二足歩行は転倒しそうで危なっかしい、立ち上がるのが面倒であるなどのため、四つ這いで目的を達成してしまうようです。

安全で実用的な歩行パターン

その意味では、四つ這い歩行は、見てくれや見映えといった側面を除けば、安全で実用的な歩行パターンであるといえます。3.錨座位での前後左右への移動腰かけ座位が可能な高齢者が移動するには車椅子がもっとも簡便な移動方法です図44 四つ遣い歩行による移動が、立ち上がる準備段階として、また座ったまま対象物に近づくために、端座位での前後左右への移動を練習する必要があります。